Research
カチオン性中間体を経る反応
C–F結合の切断を経る変換
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有機化学は長い歴史の中で発展してきましたが、従来法では合成困難な分子が未だに数多く存在します。生物活性化合物の創製研究などにでも、合成自体がボトルネックとなる場合が少なくありません。従って、新たな分子変換技術は、創薬研究等を加速するための切り札になる重要な研究課題です。これに対して、私たちは、高反応性のカチオン性中間体を経ることで、高難度な分子変換の実現を目指しています。
トリフルオロメチル基は、炭素–フッ素結合が強固で、幅広い条件下で安定な官能基です。最近、トリフルオロメチル基の炭素–フッ素結合を1つだけ、選択的に変換できる手法の開発に成功しました。この高難度分子変換の鍵は、オルト位のヒドロシリル基から、シリルカチオンを発生させるデザインです。しかも、このケイ素部位は、引き続く変換にも有用な官能基です。このコンセプトのもと、従来法では難しい有機フッ素化合物合成を可能にする新手法を開発できました。また、カチオン性中間体を経て、トリフルオロメチル基の炭素–フッ素結合を3つとも切断しながら、ケトン類を合成する手法の開発にも成功しました。現在も、有用な炭素–フッ素結合の変換を研究しています。
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Org. Lett. 2020, 22, 9292.
Chem. Eur. J. 2020, 26, 12333.
Angew. Chem., Int. Ed. 2016, 55, 10406.
https://doi.org/10.1002/anie.201604776
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東医歯大プレスリリース; 日刊工業新聞
Chem. Eur. J. 2020, 26, 6136.